JDK連続ネット小説  最終更新日: 108.11.29

「彼しかいない。」
世界中の誰に尋ねても、異口同音にその言葉が返ってくるのだ。
その頃、当の本人"編長集(あみながあつむ)"は、いつもの仲間と徹麻に興じていたのだ。しかしこの様な事態に彼に白羽の矢を当てない手はない。彼らは挙って編長の元へ飛び、三顧の礼を以て編長を迎え入れる準備に入った。
「ロン、メンピンのみ。安め。・・・あっ、ごめんオーちゃん、裏が乗った。ドラ6で倍満。」
編長の乾いた声とともに、オーちゃんこと狐谷は血の気が引いた。これで3回目のハコ点となり、事前の約束通り女を奪われることになる。しかし編長にこれ以上、女を奪われるわけには行かない。狐谷は突如居直り強盗となった。
「編長、お前はいかさまをいしている。女は渡せない。」
一瞬だった。後方からの一撃により、狐谷の頭は石榴のように吹っ飛んだ。
「代わりにマック入ってよ。」
代役のシェーンマックを交えて東3局にやっと入った矢先であった。
「KGBの八重鰹(はちじゅうがつお)という者ですが、あなたが編長集さんですね。」
「いかにも、私が編長だ。残念だが、今は編集はやってない。」
「緊急事態なんです。ご同行下さい。」
「無理だと言っているじゃないか。鷹の爪はもうなくなったのだ。」
あれは99年秋口のことだった。オールスターまで下馬評を覆す活躍で、
首位を走っていたホークスだったが、王監督の「喜びすぎた采配」のために、ずるずると連敗を重ね、結局元の木阿弥、最下位となってしまった。特に、首位から陥落する寸前、連投を重ねて追いつめられた吉武投手の自殺が痛かった。
その時でさえ、監督は「彼は疲れが出始めていた。ちょうどいいタイミングだったのでは。まあ、現有戦力で戦うしかないよ。」と言うコメントを残し、他の選手の戦意までも喪失させている。また、その後ちゃっかり、読売から谷口投手を補強していたのも大きなマイナスポイントであった。
この様に失態続きの王政権が退陣に追い込まれるのは確実な状況で、新政権に夢を抱いていたころ、事件は起こった。
「王監督、ホークス永久監督に就任。」
編長は体中から力が抜けていくのがわかった。
それまで足掛け4年にわたって続けてきた過酷な編集が水泡に帰した瞬間だった。
それ以来鷹爪は閉鎖され、唯一残された掲示板はSN男の性欲のはけ口となったのだ。
「だから私はもはや一介の雀士なんだ。お引き取りいただきたい。」
「ですから、お話だけでも聞いて欲しいのです。」
「邪魔だと言っているじゃないか。これ以上口出しするんじゃない!」
スタッフの名残とも言える鷹爪作業着を纏った強面の男二人が、八重鰹にすごんだ。
「そこまで言うならしょうがありませんね。出来ればこれは出したくなかった・・・」
(続く)(K : 99.4.10)
八重鰹は結局それは出さなかった。
時は進み20XX年 秋。
吉武の自殺など覚えている人間は福岡にはいなかった。

ある、ウイスキーバー。
カランカランッ・・
マスター「いつものですね?」
アツロー(編長のあだ名)「いや今日は酔いたくて・・ターキーダブルで」

昨日の事である、彼はいつものように閉鎖された、あの日のままの
「鷹の爪」を、十一時半頃から見ていた。
時には泣き、時にははにかみながら笑い。仲間とともに汗を流して
つくり続けたモノを誇りに思い。アツローはグラスを傾けていた。
「パラ〜ラ」
アツローは鷹の爪を辞めて、1日に来るメール平均 800。この音には
昔のようなドキドキ感はもうなくなっていた。
どのメールを見ても「やめないでください。このページがなくなったら・・・」
アツロー「死ぬんかい?」
「昨日福岡ドームに行きました。ライトスタンドの応援団が・・・」
アツロー「行くか?普通」こんなのばかりなのだ。
彼も心の奥では理解していた。「目をそらしてはいけない」
「負けたからといって、逃げてちゃだめだ」そのくらいは解っているさ

・・・これ以上俺を傷つけないでくれ・・・これ以上・・・

グラスを傾けた。その背中は揺れていた。
「20XX年12月4日(火)06時13分 」
「ご無沙汰しています。デビ狂です。」
涙で見えにくくなったその目に飛び込んできた1つのメール。
「デビ狂だ!」おとなしい、アツローが声を上げた。
それもそのはず、鷹爪を閉鎖して、「十数年」彼とは一度も連絡をしていない。勿論ほかのスタッフとも。

「デビ狂です。杉浦忠さん今朝、死によりました。新聞では心不全になってましたけど、多分他殺と思います。あの人ずっと頑張ってたから。
死ぬ間際まで、「ホークスはいいチームなんです。本当にホークスは・・・」って、あの人らしいと思いませんか?
そうですよね。今のあなたじゃ何も思いませんよね。(笑)
それだけです。またれんらくしますわ。
・・・あっ言い忘れてた。
僕一人でも戦いますよ。杉浦さんを犬死にさせとけないし(笑)。
強い犬集めて、「赤カブト」と言う名の「ダイエー」を噛み殺します。
あと、「銀牙」と「紅桜」がいてくれたらなあ・・・
これ、回りくどいラブレターちゃうんか?(笑)」
デビ狂

アツローは、そのメールを読んでなにか吹っ切れた。
久しぶりの「デビ狂」の名に、そしてその内容に・・・
「杉浦の死」「王永久監督就任」「ホークス26連敗」
「秋山愛人発覚」「ヒデカズ脱税再逮捕」「吉武自殺」
「井口、森口博子とゴールイン」「小笠原3年連続三冠王」
「王監督チーム200発宣言」「東尾、米田とまた密会」
いろんな事がアツローの頭を駆け巡った。
そして彼は叫んだ 「血沸き、肉踊る!」
つづく(J : 99.4.15)
「そうだ。会うだけなら。」
編長は勤め先「利満ブラウザ」の上司、利満社長に2年と190日の有給を申し出、早速身支度を整えた。

そしてその日の内に合弁会社「筑紫野配給」の現場を訪れこう叫んだ。
「俺はアツローだ。社長を出してくれ。」
社員がすぐに出てきて対応した。
「社長は一昨日から誘拐されていますが。」
もちろん経営難による偽装誘拐であることは編長もすぐに解った。
「利満ブラウザの株はここにある。だから社長を出せ。」
間もなく社長は現れた。
その男こそあの赤広であった。
「辞表はここにある。いつでもたたきつけるつもりだ。」
赤広はニヤリと笑ってから編長とガッチリ握手を交わした。
「あの…」
編長が切りだそうとすると赤広はそれをさえぎるように言い放った。
「デビさんだろ?今夕の東京行きのリムジンは既に手配してある。
 会社は祖樫に任せて行くつもりだったよ。
 さあ、債権者が来ない内に早く。」
しかし、この時編長が言いたかったのはそういうことではなかった。
「(…社長であるお前が誰に辞表をたたきつけるんだ?)」
しばらく編長が眠れない夜を過ごしたのは言うまでもない。

リムジンとは言っても、どうやら赤広にとっては寝台特急「あさかぜ」のことだったらしい。
B寝台の上段に陣取った二人は異常にワクワクしていた。
「赤広、久しぶりの東京だな。」
「前に行ったときもデビさんとこだったよ。旨かったなあ、焼き肉。」
「僕ももう10年になるかな?」
「東京は面白いもんな。そうそう、浅草巡りもしなきゃ(笑)。」
「ははは」
「アツロー、ガキの頃お前と遊んだのを思い出すよ。はずかしいがワクワクしてるよ。…フフフ。」
「懐かしいよね。」
「遠足気分だなあ!おい!ハハハ!…くうっ!」
バシッ!
赤広は突然編長を殴り倒した。
「浮かれるんじゃない!これから俺達はコトを起こそうとしているんだぞ!」
編長は、はっとして、こう言った。
「すまない。不安だったんだ。だから気を紛らわそうとして…。」
「いや、俺も短気だった。…すまん、仲良く行こう。」
下段の客はその会話に全く理解できなかったが、
刑事部補に昇格し、彼らを何年も付け回していた八重鰹は隣のA寝台でその会話を盗聴し、涙していた。

ギャヒョブヒュシュオーッ!!!
けたたましい蒸気音を発したかと思うと、
「あさかぜ」は夕闇に乗じて逃げるように福岡を後にした。
赤広は編長の方を向き、
「アツロー、いよいよだな」
と、目を輝かせてなじり倒した。
「行くぞ!東へ!いやさ、東京へ!」
「あさかぜ」は東へ東へと疾走していった。
デビ狂が福岡に降り立ったのはそれから間もなく、あさかぜの出発2時間後のことであった。(D : 99.4.29)
そして彼らは長崎に到着した。
翻って彼らはその船に飛び移り、興奮しながら汽笛を聞いていた。
しかし、KO大学医学部の集団レイプ事件は目を覆いたくなるものだ。
診察してもらいに来た若い女性を、必要もないのに全裸にしたり、
急患の患者に「我慢しろ!」ってどやしたそうである。
そこで、彼らはアミダくじを引いた。ぼくはホタテマンが好きだった。
また、避難勧告が出ていたにも拘わらず、中州に居座り続けたのも事実だった。
だいたい、勧告を無視してキャンプして流されて死んで、
「県や国の対応が悪い」だと?「もっとしっかり注意していれば」だって?
なんかちがわんか?それなら国は「テポドンが飛んでくるかもしれません。
ガラパゴス諸島に避難して下さい。」とか、
「人口爆発が起こっています。10人中9人を死刑とします。」って注意しなきゃね。
そうこうしていると、「サバイバル人口削減ウルトラクイズ」が始まっていた。
福留アナの「生きたいか〜」のかけ声に「ウォー」と言う参加者。
ビックリする彼らの傍らで雄叫びをあげていたのが他でもない、デビ狂氏だった。
「俺も生きた〜い!ウォー!」
彼らは目を疑った。いや、確かに多少太ったが彼に違いない。
首には5年前局長からもらった「鷹爪ネックレス」が燦々と輝いていた。
「君らは赤広に、編長!福岡からわざわざ!まあ、巨峰でもどうぞ。」
彼らはいつものミスタードーナツを持っていたが、
その一言で出しそびれてしまった。
「カンニングをしまくってドクターにいく奴もいれば、
こうして中卒なのに立派なプログラマーもいる。
あいつらが生き残って、君たちが死ぬなんて雲散霧消だよ、全く。」
編長はデビ狂の四字熟語にやや不自然さを感じながらも、彼の涙に共感した。
「じゃあ、何でさっき気合い入れてクイズやってたの?」
「・・・」デビ狂はばつが悪そうに、きびすを返した。
そう、あれは喫茶「ぼくた」での一幕だった。あれは確かに別れたはずのSPINA。
しかも子供を抱いている。賢そうな子供である。
たまたま相席した私は目を見張るだけでことばも出なかった。
SPINA も気付いた様子で、ほんのわずかだったが目と目があった。
そしてどれくらい経ったろう。気がついたとき私は違う女を抱いていた。
「第2問です。」その声で、デビ狂は我に返った。
赤広、編長は中卒であるため、クイズの参加資格さえ持っていない。
国立大学出のデビ狂は、第1問が免除され、それ故、生きる確率は3分の一と高い。
赤広は呟く。
「私立大学出の狐は俺たちを一瞥してクイズに出かけていったよ。
『あばよ』ってだけ言い残してね。だけど、さっき俺達の目の前で
死んじまった。龍神池の2個目の石がスポンジでね。ざまあみろだぜ。」
デビ狂は無言でミスタードーナツをほうばった。
この日のために特訓を積み重ねた「ジブラルタル海峡。」
彼らに何を言われようがやるしかなかった。
産まれた子供のため、そして死んだ局長のため。
つづく。(K : 99.8.23)

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1999年4月6日より
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1999 ぼくた兄弟社